世界拾遺記

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『マンダロリアン』感想ポエム:スターウォーズを好きでよかった

 

母よ、小4の時にスターウォーズを見せてくれてありがとう。まさかのEP6からの鑑賞だったが、おかげさまであれから十数年経った今、素晴らしい作品を楽しむことができています―。

 

 

とうとう観てしまったスターウォーズのスピンオフドラマ『マンダロリアン』。

ディズニープラスでのみシーズン2まで配信中だ。

お噂はかねがね、シーズン2の配信開始に合わせて1か月無料体験を使って登録してしまった。ディズニープラスの致命的な使いずらさはひとまずさておき、『マンダロリアン』は最高だった。ローグワンといい、スターウォーズは銀河に瞬く数多の星々のような名もなき者を描く、創作の豊かな土壌なのだろう。

 

 

あらすじ

帝国が崩壊してから数年、ロンリーウルフな賞金稼ぎマンダロリアン(戦闘民族の名前)は、ある人物を連れてくるよう依頼を受ける。50歳とだけ聞いていた対象は、なんと空飛ぶゆりかごに乗った言葉もしゃべれない赤ちゃん(ベイビーヨーダこと the child)だった。強力なフォースの使い手であることを理由に狙われた赤ちゃんを依頼主に届けるも、依頼主が帝国の残党だと知ったマンドー(マンダロリアンの略称)は赤ちゃんを奪還してしまう。マンダロリアンの教えに従い赤ちゃんを親か同族の元に返すため、一匹狼と赤ちゃんの旅が始まる。

 

 

よし、ロジックなど遠い昔はるかかなたの銀河系に置いてきた。もともとあったもんじゃないが。galaxyに響け!私のお気持ちポエム!

It makes me happy

こんなッ…!こんな 、一匹狼と赤ちゃんの組み合わせが嫌いな生命体このuniverseにおらんだろ、いたら連れてこい案件である。日本語でどう表現したらいいかわからず途方に暮れてしまった。というわけで It makes me happy, yeah. イェアじゃないんだわ。ウーン、こんな時は著作権フリー名言集こと「平家物語」の力を借りよう。心も詞も及ばれね。

高校生の頃、古文の先生が「をかし」と「あはれ」の違いについて、前者が普遍的で誰が見ても美しいもの(例えば桜並木とか)で、後者は個人的に性癖にぶっ刺さって「ンンアァァ~~(心臓を押さえる絵文字)」となるものと説明してくれたのだが、『マンダロリアン』はまさに銀河の生んだ「あはれ」だった。平安時代も21世紀も萌え語りをして世界に発表するのは変わらない(あっちは「をかし」だったが。)

グローグー(ベイビーヨーダの名前)とグローグーのパパになっていくディン(マンドーの名前)、かわいいとかわいいを掛けるともはや凶器になると知った。かわいいの二乗に対し自分は無意識に満面の笑みを浮かべ、歯の隙間から薄く吐くようにイーッヒッヒと発声することも知った。相当不気味なリアクションなので、他人に披露する前に知ることができて本当に良かった。ありがとう、マンドー!

 

 

かわいい その1

アソーカに会って赤ちゃんの名前がグローグーだと知って名前を呼ぶとグローグーがハッと振り向くのがもうめちゃくちゃ可愛かったね!アソーカの実写の再限度の高さに感嘆する暇もなく、

可愛いの 大洪水で響くのは 私の奇声 深夜二時半

どうだ!和歌を詠んでしまったぞ。

ディンがグローグーを何度も呼んで振り向かせては彼の素のような声で笑うのがもうめちゃくちゃ可愛かったね。そのあとグローグーがフォースを使ったときにめっちゃ喜んでたのがもう我が子の活躍を喜ぶパパそのものって感じで可愛かったね。ディンパパが運動会でスマホ構えて身を乗り出す姿が””視え””た。私はその姿を生暖かくガン見したい。語彙がもうfar, far away した。

 

 

かわいい その2

 S2の最後なんて今までずっと守ってきたマンダロリアンの戒律よりグローグーとの素顔での対面の方を選んじゃって涙ぐんでるのみんなにバレてるし(かわいい)、最初はグローグーのこと it 呼びだったのが、kid、budy、palと親密さがマシマシマシマシでねぇ?アソーカに預けるときにゆっくり船内に戻って寝てたグローグー抱っこしてヨシヨシして別れを惜しんでてこっちが2人まとめてヨシヨシペロペロしたくなったわ。させろ。

 ディンパパのアーマーはよくドロドロになってたが、あの言うこと聞かないグローグーと二人きりの船内でどう顔を見られずに手入れをしていたのだろう。あの二人の素顔を見る見せないのトムとジェリーのような攻防を20シーズンぐらい作って欲しい。

 

 

ディンパパがすごくパパしてて、ヨシ!

私の一押しシーンはゲロったグローグーの操縦しながら片手間に口元を拭ってあげてるところだ。子育て小慣れ感がダダ洩れていた。

グローグーがコクピットで遊んだり席でウニャウニャ言ってたり、配線いじって感電したり卵勝手に食ったりするのをたしなめるのがとにかく良かった。ディン自身が愛情深く育てられたのだとよくわかる。

食べ物で遊ぶな、とか本人が言われたりそれを言う大人が周りにいないと出ない発言だ。ディンは両親を帝国軍に殺されそのあとマンダロリアンに引き取られ教育されたわけだが、決して戦闘訓練だけをスパルタ指導されたのではなく、「親子」として養育されたのがディンのグローグーに対する言動から察せられた。フルフェイスのヘルメットに抑揚のない声だからロボットのような印象だけど、全然そうじゃないことが節々から伝わる演出に気が狂いそうだった。

特に、最後にヘルメットを外すシーンはEP6のラストを彷彿とさせる「父子」の交流と別れでこれは制作側も確信犯だろう。

 私にもとうとう母性本能が?と思ったりもしたが赤ちゃんラッコが陸で転がってる動画を見ても同じことを思ったのでたぶん違う。

 

 

まじめ感想もいくぞ

 理性的なタスケンの描写

『マンダロリアン』では、双子の太陽が輝く惑星タトゥイーンがよくでてきた。その中でも、タスケンに対話シーンや共闘する話があったのがとても良かった。タスケンは好戦的で野蛮な種族としての描写が今までは多かったが、それが改善されていて対話をしたり協力したりと理性的な一面が描かれてのはステレオタイプを否定していて特筆に値する。

 

 

アンバランスなグローグーと安定したディン

ディンは不愛想な一匹狼に見えて実は他者と協力したり助けたり案じたりも普通にする情緒のよく発達した人に見える。賞金稼ぎをするには一人が楽だから、くらいのモチベーションの一匹狼で一匹狼界では「ぬるい」部類だろう。むしろ、他人との適切で自分にとって居心地の良い距離感を心得ているようでもある。戦闘能力だけでなく精神的にも自立している。

その一方で、グローグーはディンより年齢だけは上だがその内面はとても不安定だ。言葉がしゃべれないからではない。コルサントジェダイテンプルで訓練を受けていたのに、倫理観や協調性に欠けすぎている。乗客の貴重な卵を盗み食いするくらい善悪判断がつかないものが強力なフォースの使い手だなんて、幼児に実弾こもった拳銃で遊ばせているようなものだ。アンバランスさがいびつで危うい領域に達している。アソーカがグローグーの訓練をためらったのも少しわかる気がしてしまった。

 

 

最後はなんだかんだで理性を取り戻してしまったが、S3を見た暁にはまたロジックとボキャブラリー放り出して疑似親子を愛で狂いたい。ゴールデングローブ賞ノミネートおめでとう!テーマ曲がすごく好きだ!エンドロールのコンセプトアートの画集をくれ