世界拾遺記

映画ドラマ漫画の感想、博物館訪問記、だいたい同じことを言っている

アニメ『進撃の巨人』感想④:『誰かにとっての「正義」は他の誰かにとっての「悪」』なんてクソ食らえ

正義について考え続けろ 『進撃の巨人』アニメThe Final Season の広告ポスターに正義と悪の字が逆さに大きく書かれたものがあった。この世には「正義」も「悪」も無いとか、立場が違えば「正義」も「悪」になる、多様な「正義」を認め合えれば争いはなくな…

アニメ『進撃の巨人』The Final Season 70話感想②:ガビ、怒涛のおまゆう特大ブーメラン乱れ投げ

ガビの主張とその問題点 カヤの主張とその問題点 「話し合い」で炙り出された矛盾 カヤに怒鳴り散らし糾弾するガビの言葉はすべて、いわゆる「特大ブーメラン」だった。カヤをはじめ、島のエルディア人には先祖の犯したジェノサイドの罪があるとガビは言った…

アニメ『進撃の巨人』The Final Season 70話感想①:ガビとファルコの思想の違い ーなぜファルコはエレンとライナーの会話を理解できたのか

目次 ガビの「善良なエルディア人思想」の妄信 ファルコのガビの思想に対する態度 ブラウン家の家庭環境 ファルコがエレンとライナーの会話を理解できた理由 ファルコの思想とは ガビの「善良なエルディア人思想」の妄信 一見、ガビの思想は過激で偏重で彼女…

アニメ『進撃の巨人』The Final Season 69話「正論」感想:「想像の共同体」

目次 目次 「そもそも国ってのがまだわからんなあ」 そ れ な 駐屯兵団のオッサンが口にした「国」:主権国家 強者のルールへの強制 「人類」から「エルディア人」へ 鉄道建設 優秀な人間を13年で死なせるマーレ 優秀な人間を使い捨てるという搾取 リプロダ…

『マンダロリアン』感想ポエム:スターウォーズを好きでよかった

母よ、小4の時にスターウォーズを見せてくれてありがとう。まさかのEP6からの鑑賞だったが、おかげさまであれから十数年経った今、素晴らしい作品を楽しむことができています―。 とうとう観てしまったスターウォーズのスピンオフドラマ『マンダロリアン』。 …

アニメ『進撃の巨人』The Final Season 67話感想:「英霊」—祖国のための死に駆り立てる装置の登場

フロックの「英霊」発言 灯りに沿って低空で進む飛行船へ、地上での戦闘から兵士たちが続々と引き揚げていく。サシャから把握している限り死者6名と告げられ、自分が指揮した作戦で死者が出たことにうなだれるジャンに対し、フロックが放った言葉が衝撃的だ…

アニメ『進撃の巨人』The Final Season 67話感想:あの凶弾はなぜ放たれたのか

見てない被害を否定する=加害を否定する 66話感想でガビの、信じたいものだけを信じて被害者意識に浸る傾向について指摘した。 across2logos.hatenablog.com ガビの危うさの決定的な表れが、ガビの「私も見てない」発言だ。収容区への奇襲で亡くなった人々…

"日本人"よ、『熱源』を読んでくれ

とんでもない小説と出会ってしまった。 2020年1月発表の第162回直木賞を受賞した川越宗一氏の歴史小説『熱源』は、明治から第2次世界大戦終戦までの北海道と樺太で、日本とロシア、2つの帝国に翻弄されすり潰されそうになりながら生き抜いた実在の人物たちを…

アニメ『進撃の巨人』感想③:血統で定義される「民族」エルディア人

他人にアイデンティティの決定権を握られる理不尽 マーレ編でのエルディア人隔離政策には、その人権侵害っぷりにばかり目が行っていて前述した「居心地の悪さ」にばかり気を取られていたが、もう一つの「違和感」をようやく認識した。 across2logos.hatenabl…

アニメ『進撃の巨人』The Final Season 66話感想:ガビを煙たがるな

日本での視聴者の大多数は「マーレ人」 マーレ編でのパラディ島勢力による奇襲は『進撃』冒頭の超大型と鎧による壁内人類への攻撃の立場を入れ替えた再現であることは一目瞭然だ。視聴者は、それまでの壁内での死闘を見てきたのもあり、エレンたちの視点から…

アニメ『進撃の巨人』感想②:歪んだ歴史認識

この作品のテーマ:歴史は事実ではなく「物語」 正義と悪のせめぎあいでも正義の暴走を描いたわけでもなく、歴史認識がかみ合わず対立しあい、悲劇を生んでいるのが進撃だと思っている。この作品では要所要所で歴史と歴史認識がキャラクターやストーリーを動…

アニメ『進撃の巨人』感想①:マーレ編全体を覆う「居心地の悪さ」

ネカフェや岩盤浴場でちょこちょこ読み進めてきた『進撃の巨人』のあにめファイナルシーズンの放送が始まった。昨シーズンで巨人を駆逐し、エレンら壁内人類の「敵」は、巨人から自分たち以外の世界となったところからファイナルシーズンは始まる。 原作漫画…

『ウィンクス・サーガ〈宿命〉』S1感想:魔法の強さが「強さ」じゃないファンタジー

Netflixドラマ『ウィンクス・サーガ』シーズン1 あらすじと感想

性差の日本史訪問記:「日本史」の日陰から

女性史が「企画」される意味を考える 『ジェンダー〈性差〉の日本史』と銘打たれ、「女性史」ではなくあくまでも「男女の」性役割の歴史の企画展となっているが、その内容のほとんどは埋もれていた女性リーダーや女性家長、社会における女性の待遇と差別に言…

ウポポイ訪問記:本土の和人、ウポポイへ行く

本土の和人、ウポポイを目指す 9月末に日本で7番目の国立博物館である国立アイヌ民族博物館と併設した「民族共生象徴空間」ウポポイへ行ってきた。現在、博物館はコロナ対策の入場規制が実施されている。しかし、完全事前予約制となっていることを知らず直前…

『もののけ姫』感想:「日本」から周縁化された人々の物語

タタリ神は私だ 「もののけ姫」を初めて見たのは小学生の時分だった。祟り神のおどろおどろしさは言うまでもなくゾッとしたし、エボシを「悪」として、年齢が近かったのもありサンやアシタカの肩を持ち感情移入していた。 しかし、ほぼ24歳になる2留目をぶち…

『アメリカン・アニマルズ』感想:楽な生き方の代償

あらすじ 刺激を欲していた大学生、ウォーレンとスペンサーは1200万ドルになるという図書館の貴重な蔵書を盗むことを思いつく。チャズとエリックを計画に引き入れ犯行に及んだ実際の強盗事件を本人たちの出演と回想により紐解いていく。 実話の「物語」 この…

『ブリジャートン家』感想②:「現代のジェイン・オースティン」が描く近世ロンドン社交界ー1ー

『ブリジャートン家』は、19世紀前半のイギリス社交界を舞台にした物語だが、その展開はフェミニズムによって支えられている。原作小説の著者が「現代のジェイン・オースティン」と称されており、人種的多様性はドラマのプロデューサーによるが、フェミニズ…

『ブリジャートン家』感想①:似て非なる超進化版ゴシップガール

Netflixオリジナルの新たなヒット作 2020年12月25日に公開されたNetflixオリジナルドラマ『ブリジャートン家』。公開以来4週間で6300万世帯が視聴したNetflixの新たなヒット作だ。 見始めたら止まらなくなり一気見してしまった。 あらすじとみどころ まず簡…